1.開発の背景
2030年代に向けたIoT、人工知能(AI)、ビッグデータ処理の進化と、これに基づく新たなサービスやアプリケーション創出により、大量のデータを低遅延で届けられる、大容量ネットワークインフラが必要不可欠である。さらに、ネットワークインフラの拡大、大規模化に伴い、通信事業者やデータセンター事業者のカーボンニュートラル化への取り組みも喫緊の課題となっている。これらの課題を解決する光1波あたりの伝送容量を世界最大の1.2Tbpsまで引きあげる光伝送システムを実用化した。
2.開発技術の概要
世界初の140Gbaudの高速信号を伝送可能とするデジタル信号処理LSIと狭線幅波長可変レーザを適用し、さらに送受信デバイスや光伝送路にて発生する波形歪を高精度に補償する技術を組み合わせることにより、世界最高となる1波あたり1.2Tbpsの大容量伝送を実現した(図1)。また、スーパーコンピューター「富岳」の開発および製造で培った知見を活かし、世界で初めて光伝送装置に水冷技術を適用し、伝送容量(Gbps)あたりの消費電力が世界最小の120mWとなる低消費電力化を実現した(図2)。また、ディープニューラルネットワークを応用したネットワークの特性、状態を精度よくモニタする技術を開発し、これをネットワーク設計、構築に活かすことでネットワーク全体の電力利用効率を向上する技術を確立した。
3.開発技術の特徴と効果
商品名「1FINITY Ultra Optical System」を構成する「1FINITY T900シリーズ」として製品化し、通信事業者やデータセンター事業者等に採用されている。今後、さらに国内外に拡販し、AIをはじめとするビッグデータ処理の普及で急増するデータトラフィックに対応できる、レジリエントで環境負荷の低いネットワークインフラの構築に貢献する。
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