市村産業賞

第57回 市村産業賞 貢献賞 -05

スキンケア機能を付与したオストメイト向け薄型ハイドロコロイド

技術開発者 アルケア株式会社 医工学研究所 商品開発部 オストミーケアグループ
グループ長 奧山 亘
技術開発者 同社 同研究所 同部 同グループ
スペシャリスト 加藤 大智
技術開発者 同社 千葉工場 工程設計部 1課
松井 美沙子

開発業績の概要

1.開発の背景
 大腸癌などにより腹部に排泄の開口部(ストーマ、人工肛門)を造設した人をオストメイトといい、日本で23万人、全世界で250〜300万人いると推定されており年々増加傾向にある。オストメイトは、排泄物を管理するため腹部にストーマ装具を装着するが、大きな悩みとして、面板(腹部に貼付する部分)の剥がれ、貼付部や外周部の皮膚トラブルが挙げられる。面板の剥がれを予防するために、オストメイトは面板外周部をテープで固定するが、蒸れやかぶれといった皮膚トラブルの原因となっている。オストメイトは24時間装具を装着し続ける必要があるため、皮膚トラブルが発生すると大幅なQOL低下を引き起こす。上記の課題を解決するため、スキンケア機能を付与した薄型ハイドロコロイドの開発に着手した。

2.開発技術の概要
 キーマテリアルとして、粘着剤に重合開始剤が側鎖にあるペンダント型紫外線硬化ポリマー(ホットメルト)を選定し、皮膚保護成分(CMC・セラミド)を配合した(図1)。また、上記材料を薄膜塗工もしくはスプレー塗工(図2)することで、厚さ100μm以下の新規薄型ハイドロコロイド粘着剤を開発した。

3.開発技術の特徴と効果
 安全性と、高い配合自由度による機能性付与・薄膜化の両立により、これまでにない透湿性・吸水性・伸長性を併せ持つ薄型ハイドロコロイドを開発することができた。本技術を応用して、皮膚トラブルのリスクを低減できるオストメイト向けストーマ装具用固定テープとして実用化し(図3)、QOL向上に貢献している。今後、スキンケア機能を有する医療用粘着テープ、創傷被覆材、テーピングテープ等皮膚粘着製品全般への波及効果が期待できる。


図1

図2

図3