市村地球環境産業賞

第52回 市村地球環境産業賞 貢献賞 -01

省エネ型精密温調空気供給装置の開発

技術開発者 オリオン機械株式会社 技術研究所
特別技術顧問 吉岡 万寿男
技術開発者 同社 環境システム事業本部
副本部長 小林 正一
技術開発者 同社 同事業本部 空調システム技術部
部長 寺島 雅俊
推  薦 公益財団法人 日本発明振興協会

開発業績の概要

1.開発の背景
 エレクトロニクス部品の加工分野では技術革新の方向性が微細化、高精度化に向かっており、精密加工を行なう装置の周囲温度変動を±1℃以下に抑制する精密空調機が広く使用されてきた。精密空調機は冷凍機連続運転と電気ヒータを組み合わせた方式が一般的であるが、消費電力が大きくなる課題があり、市場からは省エネ化の要望が高まっていた。これら市場要求に応えるため、電気ヒータを使用せず精密温調と省エネの両立を実現する冷凍サイクルを開発することとした。

2.開発技術の概要
 従来の精密空調機では、温調対象空気を冷凍回路にて一旦目標温度以下に冷却した後に、電気ヒータで加熱することにより精密温調を行っており、加熱用電気ヒータについては冷却能力以上の容量を搭載する必要があり消費電力が大きくなる課題があった。そこで本業績の省エネ型精密空調機は、電気ヒータを用いず1台の冷凍圧縮機で冷却用と加熱用の独立した冷凍サイクルを二つ内蔵し、冷媒の分流制御を最適に行うアルゴリズムを確立したヒートポンプバランス®制御を開発し、冷凍サイクルのみで±0.1℃の精密温調を実現した。
 さらに冷凍圧縮機の回転数制御を組み込むにあたりインバータを自社開発し、汎用インバータでは困難であった圧縮機の最大回転数アップと低回転時に発生する振動の抑制をベクトル制御とトルク制御の技術確立により克服し、省エネと精密温調の両立を可能とした。

3.開発技術の特徴と効果
 ヒートポンプバランス®制御を搭載した省エネ型精密空調機は,従来の精密空調機と異なり加熱源としての電気ヒータが不要であり、従来と比較し70%以上の省エネ(最大80%省エネ)を実現しCO2の排出削減に大きく貢献している。本技術を搭載した精密空調機は電子機器の製造装置向けに広く導入されているが、空気の温度制御以外に、精密加工向け等の液体の精密温調や環境試験装置の精密温調手段として本技術が活用されている。

図1
図2