市村地球環境産業賞

第54回 市村地球環境産業賞 貢献賞 -01

自動車塗装工程における凝縮水を用いたVOC回収技術

技術開発者 マツダ株式会社 技術本部 車両技術部 塗装技術グループ
アシスタントマネージャー 加藤 雄
技術開発者 同社 同本部 同技術部
部長 篠田 雅史
技術開発者 同社 同本部 同技術部 同グループ
マネージャー 寺本 浩司
推  薦 一般社団法人 日本自動車工業会

開発業績の概要

1.開発の背景
 自動車製造における塗装工場の環境負荷は大きく、地球温暖化につながるCO2削減と大気汚染の原因物質であるVOC*1)の排出量削減は重要課題である。この課題に対して当社では、材料機能と設備機能の追究によりCO2とVOCを同時削減する「アクアテック塗装」を開発した。今回は、この考え方を塗装乾燥炉に拡大することでCO2とVOCの更なる同時削減を目的とした。塗装乾燥炉では、乾燥の過程で水蒸気とVOCが発生する。VOC処理には一般的に燃焼式が採用されるが、燃焼以外の方法で処理する事ができれば大幅なCO2削減が期待できる。
*1)VOC:揮発性有機化合物(Volatile Organic Compound)

2.開発技術の概要
 凝縮水によりVOCを吸着回収する技術を開発した。吸着させるための水は乾燥炉内から取り込んだ水蒸気をヒートポンプにより冷却して発生させた凝縮水であり、VOCと接触させて吸着した後で気液分離を行い回収する。水蒸気の冷却にヒートポンプを使用しているため、気液分離後の空気をヒートポンプの高温側で加熱することで再び乾燥炉に戻すことができる。VOC処理後の空気を排気せずに循環させる事が可能となるため、排気によるエネルギー損失が発生せず、燃焼式と比べて大幅なCO2削減が可能となる。

3.開発技術の特徴と効果
 従来の燃焼式排気処理装置に代わり、VOC回収式乾燥システムを開発することで、排気の完全回収を行い、乾燥炉本体からの排気をゼロにした。さらに、システム内で、リソース(熱・水)をリユースする事により省エネルギー性と低環境負荷を両立させている。CO2削減効果は従来装置比で▲63% (▲710t-CO2/年)の効果がある。

図1