1.開発の背景
国内のバイオマス発電の効率は通常20〜30%であるが日本国内の大型火力発電は効率40%を超える。この技術をカーボンニュートラルなバイオマスの活用に生かせれば、CO2削減の分野で大きなインパクトが与えられ、さらに賦存量が増大傾向にある日本国内森林資源の有効活用も両立可能であることに着目し、開発に取り組んだ。また,速やかな社会実装のため、発電所の操業を維持しながら低コストかつ短期間に実装可能な機構を目標とした。
2.開発技術の概要
当初は木質バイオマスと石炭を事前混合処理したが、僅かな混入量(数cal%)で処理量が限界に達したため、石炭ミルを木質バイオマス専用ミルとして利用する炉内混焼方式の採用で混焼率アップを目指した。検討の結果、既存の石炭バーナでは、木質バイオマスの粒径が2mm以下であれば燃焼可能であったが、石炭ミルについては、木質バイオマスは繊維質のため粉砕が難しく、粉砕粒径が増大(石炭では0.2mm未満)し、その粒子を従来のミル内の空気速度ではミルから排出することができず、処理能力が数分の一以下に低下した。対策の検討は、ミルの構造上、大幅な流速増加は困難であったため、ミル胴内に構造体(縮流リング)を挿入し、空気流速が増加する部位を作り、粒子の排出を促すよう、基礎試験、数値解析、試作等を重ね、約4年間の期間を経てリング形状を改良、商用機に適用可能な技術水準に達することができた。(図1)
3.開発技術の特徴と効果
本技術は比較的短期間・低コストで石炭ミルを木質バイオマス専用ミルに改造可能であり、木質バイオマス燃料の供給状況等に応じて石炭ミルにも戻すこともできる点に特長を有する。本技術は2015年に商業発電所(日本製鉄釜石発電所149MW)において国内で初めて実証され(図2)、その後、引き続き改良を重ね、従来は数cal%の混焼率を2017年には新設火力において混焼率25〜30cal%を達成。以降、既設大型火力にも順次適用し、2022年には100%木質バイオマスの専焼化を達成し(図3)、CO2排出削減に貢献した。
|