市村地球環境産業賞

第57回 市村地球環境産業賞 功績賞 -01

脱炭素に資する高濃度セルロースファイバー成形材料の生産技術

事業経営者 パナソニック ホールディングス株式会社
MI本部 マニュファクチャリングソリューションC
シニアエンジニア 浜辺 理史
技術開発者 同社 同本部 生産技術研究所 第一研究部
部長 名木野 俊文
技術開発者 同社 同本部 成形技術開発センター
シニアエンジニア 峯 英生

開発業績の概要

1.開発の背景
 昨今の海洋プラスチック問題や石油資源の枯渇・地球温暖化等の環境問題から、石油由来樹脂削減、CO2排出削減が求められており、当社も社会全体の石油由来樹脂・CO2排出削減を目指している。我々は、石油由来樹脂を植物由来のセルロースファイバー(CeF)成形材料に置き換え、CO2排出削減と資源循環を実現する高機能成形材料生産技術を確立させた。今後、幅広い商品に展開することで環境問題解決に貢献していく。

2.開発技術の概要
 CO2排出量が実質ゼロとされる間伐材、または木くず等の廃棄物を原料とするCeFで石油由来樹脂を置き換えることで廃棄物の有効活用とCO2削減の双方に貢献できる事に着目し、CeFを高濃度で樹脂に複合し、高精度射出成形が可能なCeF成形材料「kinari」を開発した。複合後のCeF成形材料の強度不足、生産時のCO2排出量、CeF炭化による茶褐色化などの問題点に対し、解繊レベルをコントロールする事で弾性率や衝撃強度を高める技術、植物濃度を高めた複合材料を低CO2排出量で複合する技術、低温で複合し白色化を維持する技術を開発した。

3.開発技術の特徴と効果
 kinariは、①製造時のCO2排出量が少なく、軽量かつ高強度、②材料の白色化・高精度射出成形技術により様々な製品形状に適用可能、③資源循環可能なサスティナブル素材という優れた特徴を有し、2018年国内家電で初めて掃除機で採用し、2019年アサヒビール(株)のリユースカップとして商品化、その後、CeF70%、バイオマス度90%、廃材グレード材料(間伐材、食品残材など)、生分解(土壌、海洋)の開発を進めてきた。

図1

図2