市村学術賞

第44回 市村学術賞 貢献賞 -04

花粉の自家蛍光特性を活用した実用的な花粉種自動識別計測装置の開発

技術研究者

筑波大学 生命環境系
教授 青柳 秀紀

技術研究者

興和株式会社 電機光学事業部 研究開発本部
主席研究員 薮崎 克己

技術研究者

同社 同事業部 同本部
研究員 光本 浩太郎

推  薦 筑波大学

研究業績の概要

 アレルゲン花粉に由来する花粉症は国内外で深刻な社会問題となっている。現状では、花粉症の根本的治療法は無く、抗アレルギー剤による症状の緩和が一般的である。最も有効な対策は花粉との接触を避けることであり、花粉の種類を識別し、Real-timeで正しい花粉飛散情報を得る事が重要である。しかしながら、従来の花粉計測法は客観性、迅速性、感度、選択性の点で一長一短があり、これまで正しく、有効な花粉情報が得られてきたとは言い難い。この現状を踏まえ受賞者らは、従来法の問題点を排除した新規な花粉種自動識別計測装置(大気中の花粉種を識別し、飛散数を選択的かつ精度良くReal-time計測できる)を考案した。
 受賞者らは、1花粉に適切な紫外光を照射すると花粉種独自の自家蛍光が発生する事、2自家蛍光を色成分に分け、色比 [青/赤]と花粉の粒径に基づき花粉種の識別が可能な事を明らかにし(新技術開発財団植物研究助成の成果)、この現象を活用した花粉種自動識別計測装置を開発した。開発装置は、ポンプで大気を吸引し、バーチャルインパクター(花粉と他の粒子をサイズ差で分級)により、花粉サイズの粒子が選択的に、測定部に一個、一個、導入され、青紫色半導体レーザーより紫外光が照射される。花粉は紫外光を散乱し、同時に励起され自家蛍光を発する。受光部で青蛍光、赤蛍光、散乱光を検出し、色比 [青/赤]と花粉の粒径(散乱光より推算)を算出し花粉識別関数に基づき花粉種を識別、自動計数する。また、シースエアーシステムにより測定部気流の安定化と汚れ付着防止を実現し、長期間、野外での花粉種識別とその飛散数のReal-time計測を可能にした。
 本装置は東京都の花粉情報提供サービス等に採用され、現在、スギ、ヒノキ、草本花粉の情報提供がなされている。本装置で得られる情報は国内外の花粉症患者のアメニティー向上に大きく貢献するとともに、植物生態の把握、林業設計、組換え植物の花粉飛散挙動の把握、花粉と微粒子の付着特性の解析等、その利用性、有用性は広い。

図1

図2

図3