市村学術賞

第45回 市村学術賞 功績賞 -01

サステナブル表面改質のためのキャビテーションピーニングの開発

技術研究者

東北大学 大学院工学研究科
教授 祖山  均

推  薦 東北大学

研究業績の概要

 サステナブル表面改質とは、サステナブル社会の実現を目的とした表面改質であり、本研究により、地球温暖化抑制のためのCO2の排出削減と、水素燃料を安全に使用するための水素脆化抑止が可能となる。従来技術のショットピーニングでは、ショットの衝突を用いた加工硬化により、疲労強度向上を図っているが、固体接触により必然的に表面粗さが増大して強度向上の弊害となるため、新たな表面改質の構築が求められている。
 本研究では、逆転発想的な研究により、流体機械に致命的損傷をもらすキャビテーション気泡の崩壊時に生じる衝撃波による衝撃力を、水中に高速水噴流を噴射するキャビテーション噴流により制御して、ショットレスで金属材料を表面改質するキャビテーションピーニングを構築した。これまでに受賞者の研究を学術的基盤として、発電プラントの応力腐食割れ抑止法が実用化されており、水中にウォータージェットを噴射することからウォータージェットピーニングと呼ばれてきた。受賞者は、自動車部品等の表面改質に適用するために、キャビテーション衝撃力の積極的な強化やキャビテーションピーニング特有の衝撃波による加工の現象解明を行うとともに、自動車メーカとの共同研究により歯車などの疲労強度向上を実証してきた。さらに、受賞者は、低速水噴流中に高速水噴流を噴射することにより気中キャビテーション噴流を実現して表面改質に成功し、単に水中に高速水噴流を噴射する水中キャビテーション噴流よりも加工能力が高いことを実証している。この気中キャビテーション噴流により、水槽に入れられない大型構造物やプラント外面の表面改質も可能である。さらに、固体接触を伴わずに金属材料に圧縮残留応力を導入できることに着目して、金属材料の水素脆化抑止を実証した。
 本研究により、金属材料の疲労強度を向上できるので、自動車などの輸送機器を軽量化でき、燃費改善によるCO2の排出削減が可能であり、また水素脆化抑止により水素社会の実現に貢献できる。さらに、航空機部品への適用が望まれており、世界的規模での展開が期待されている。

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