市村学術賞

第45回 市村学術賞 貢献賞 -02

触媒燃焼と熱電変換を融合した新規デバイス創成と実用化

技術研究者 独立行政法人 産業技術総合研究所 先進製造プロセス研究部門
電子セラミックプロセス研究グループ
研究グループ長  申 ウソク
推  薦 独立行政法人 産業技術総合研究所

研究業績の概要

 水素はクリーンな反面、安全に利用するための高性能で且つ低コストの安全技術が不可欠である。現在市販されている殆どの可燃性ガスセンサは狭いガス濃度範囲しか検知できず、水素を選択的に検知するのが困難である。受賞者は、熱電変換原理を活用した新しい動作原理のデバイスを提案した。熱電デバイスにガス選択性に優れたセラミックス触媒を集積化し、可燃性ガスの触媒燃焼によるデバイス上の局部的な温度差をゼーベック効果で電圧に変える、熱電式センサデバイスを開発した。図1にその動作原理を示す。
 この動作原理を基に、マイクロ熱電デバイス上に燃焼触媒を集積化し局部的な熱制御を実現することで、高信頼性と高感度を両立させたマイクロガスセンサを世界で初めて実用化した。開発したセンサ(図2)は優れた水素選択性を持ち、0.5ppmの低濃度から5%の高濃度までの広範囲にわたる水素濃度を検知できる。その信頼性についても、実際の水素ステーションに設置し、1年間フィールドテストを行い、高感度検知性能の耐久性を実証した。開発した水素検知性能を基に、ISO/TC197(水素技術) での水素検知器の新規国際規格の提案を進めて2010年に国際規格が発行された。今後の水素技術の安全レベルの向上が期待できる。
 さらに、熱電式ガスセンサ技術を実用化するためベンチャー企業を立ち上げて水素センサの商品化に成功し、人間の呼気中の水素濃度計測といった医療機器開発、マイクロ発電デバイス等の新たな応用及び産業創成を展開している。

図1

図2