市村学術賞

第46回 市村学術賞 功績賞 -01

一様疑似乱数発生法の高機能化

技術研究者

広島大学 大学院理学研究科 数学専攻
教授 松本  眞

推  薦 広島大学

研究業績の概要

 計算機の発達により、株価変動、たんぱく質の折り畳み、核反応など、確率的現象のシミュレーションが行われるようになった。その際、サイコロを振って得られるようなでたらめな数列である乱数が必要となる。フォン・ノイマンが導入した疑似乱数は、漸化式により乱数を模倣するもので、改良されつつ大きな成功を収めたが、計算機の高速化に伴いわずかな偏りがシミュレーションを損なう例が多数報告されるようになった。
 受賞者はメルセンヌ・ツイスター疑似乱数発生法を開発・公開した。有限体の数学理論とデジタル計算機の特性を合わせた、数学的保証のある疑似乱数高速生成アルゴリズムであり、乱数の品質に起因する問題を払拭した。
 219937−1という長周期、623次元空間での一様分布性、CPU特性を生かした高速生成といった特長により広い分野で用いられ、JIS規格、ISO規格、ならびに多くの計算機言語での標準疑似乱数となっている。さらに、計算機の並列化やグラフィック処理プロセッサ(GPU)の発達に合わせた改良を行い、並列発生のための動的パラメータ生成MTDCや、SIMD命令による高速化であるSFMT、GPU用発生法MTGPを開発し、世界的に利用が進んでいる。

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