市村学術賞

第46回 市村学術賞 貢献賞 -05

都市間敷設光ファイバによる光基準信号の伝送・比較技術の開発

技術研究者 独立行政法人 情報通信研究機構 電磁波計測研究所 時空標準研究室
主任研究員  藤枝 美穂
技術研究者 同機構 同研究所 同研究室
主任研究員  熊谷 基弘
技術研究者 同機構 同研究所 同研究室
主任研究員  井戸 哲也
推  薦 独立行政法人 情報通信研究機構

研究業績の概要

時刻・時間・周波数、これらは科学技術を根底から支える基盤であり、現代社会は、いつでも、どこでも時間の基準信号を共有して利用できることが前提となっている。近年、光領域の発振器であるレーザーを使用して高精度かつ高安定な光基準周波数が得られるようになり、これを遠隔地の広範囲のユーザーに精度を損なわずに供給することが課題となっている。
受賞者は、市中に敷設されている光ファイバにおいて振動・温度変化等の外乱による光位相変動や偏光回転を補償する技術を開発し、通信帯の光基準周波数を精度劣化無く遠距離伝送する技術を開発した。開発は、まず情報通信研究機構(NICT)小金井本部と大手町間の往復100kmにおいて行われ、 さらにその性能を実験的に検証するために伝送経路を東京大学本郷キャンパスまで延伸し、世界で初めて異なる二拠点(NICT・東大)にある同種光時計の直接周波数比較を実現した。そして、両拠点の標高差56mのために原子時計の刻む周波数が15桁目からずれてしまう一般相対論の検証に成功し、開発したシステムの高い信頼性を証明した。
本技術によって光周波数標準を遠隔地との間で共有できるため、光基準信号のネットワーク構築がヨーロッパ域内、首都圏、及び全国規模で計画されており、上述のリンク実験はそのさきがけとなっている。このネットワークによって様々な地点で高精度な基準信号を利用する事ができれば、光周波数標準の供給だけでなく、高多値度の高速大容量光通信、多点同時観測による高精度リモートセンシング、重力ポテンシャルの差異による地下資源の探索、など様々な研究分野に恩恵をもたらすと期待されている。

図1