市村学術賞

第47回 市村学術賞 功績賞 -02

光パケット・光パス統合ノード装置の研究開発

技術研究者

国立研究開発法人 情報通信研究機構 光ネットワーク研究所
主任研究員 品田 聡

技術研究者

同機構 同研究所
研究室長 原井 洋明

技術研究者

総務省 情報通信国際戦略局 技術政策課 研究推進室
課長補佐 古川 英昭

推  薦 国立研究開発法人 情報通信研究機構

研究業績の概要

 インターネットや移動通信のデータ流通量は増え続け、通信機器の消費電力増加が問題となっている。コンテンツ需要の多様化や流通量変動に対し、ネットワークには「安価で高速」「高品質」な通信サービスの提供が求められる。高速、低エネルギー化には光通信技術の利用が有効である。しかし、光信号を扱う技術には未だ課題が多く、現在のネットワークは、高品質通信ではあるが通信路を占有し通信路切替に時間がかかる光パスと、柔軟なサービスを提供できるが、光信号を電気に変換して交換処理するパケット交換が併用されている。
 受賞者らは、これまで開発した光パケット信号に対応可能な最先端光技術を実装した機器を活かし、通信路共有で資源効率が良い光パケット交換と、通信路を占有するかわりに高品質を得る光パスを同時に提供する「光パケット・光パス統合ノード装置(以下、光統合ノード)」を世界で初めて開発した(図1)。
 光統合ノードによるネットワークは、光波長多重技術を利用し光パケット信号と光パス信号に異なる波長を割り当てる。ベストエフォートのデータ通信には光パケットを、低遅延で大容量の高品質データ通信には光パスを割り当てることにより、光周波数帯域(波長資源)の高効率利用を図ったネットワークである。光統合ノードは、光パケットと光パスの混在した光信号(図2)を分離し、光・電気変換のない全光交換処理で大容量かつ低消費電力を実現し、転送性能においてもITU-T勧告のパケット誤り率指標を十分に満たしている。
 本研究開発によって、様々なコンテンツの光交換処理が可能となり、大幅な低消費電力化ができ、さらに限られた通信資源の効率的な運用もできる。今後、実験用のテストベッドネットワーク、通信事業者やデータセンタなどへ導入され、大容量ネットワークの省エネ化とサービスの多様化への貢献が見込まれる。

図1

図2