精密抵抗器用金属箔材料とそのパッケージ方法を高度化すること、および量子ホール効果抵抗標準を用いた評価技術により、標準抵抗器の大幅な性能向上が達成されることを創案した。2006 年より抵抗器メーカーなどと共同研究を開始し、製品化に成功した。
0.001ppmのオーダーに達する測定分解能をもつ量子ホール効果抵抗標準を基準にした抵抗の微少変化評価技術を確立し、それを用いた合金抵抗材料の製作条件の最適化を成し遂げた。その結果、材料の経年および温度変化等に対する抵抗率変化を極めて小さくすることに成功(図1)した。さらに外部からの振動、環境変動の影響を受けない抵抗材料の保持方法を創案・採用することで、従来の標準抵抗器より、サイズが1/20以下ながら、性能を10倍以上(経年変化0.1ppm/年以下、温度変化0.1ppm/℃以下)高めた高性能小型抵抗器を開発(図2)した。
通常抵抗標準器は、厳しい温度管理、慎重な取り扱いを必要とする。しかし開発した抵抗器は、温度などの環境や経年による変化が極めて少なく、衝撃にも強い。よって開発品は比較的緩い管理の下であっても、従来品を上回る性能を発揮させることが可能である。これを用いれば、抵抗関連量の高度計測が容易に実現し、また装置が簡便化される。結果、国家標準から計測現場へ質を落とさず、そして使いやすい形でトレーサビリティを確保できるため、計量トレーサビリティの革新につながる。またその大幅に小型化した特性を利用すると、測定装置・制御装置に実装することも可能であり、その効果は直接完成製品の性能に直結する。すでに、海外も含め校正機関に普及しつつあり、抵抗範囲の拡大、汎用品への展開も進んでいる。
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