市村学術賞

第48回 市村学術賞 貢献賞 -03

ダイヤモンド材料の電極機能開拓

技術研究者 慶應義塾大学 理工学部
教授 栄長 泰明
推  薦 慶應義塾大学

研究業績の概要

 地球環境問題解決に向けての研究開発が盛んである。汚染物質の高感度センシング、汚水浄化、CO2 の資源化などの課題に対し、高性能のシステム開発の一方で、システムを構成する材料に関する検討が重要視されており、特にレアメタルフリーかつ革新的機能をもつ新材料を用いたシステムの実現が求められている。また、医療現場では、病態解析にあたり、少量の試料で、簡便かつ高感度な物質センサーが求められている。電気化学分析は簡便さから期待が大きいものの、感度や安定性などの問題点も多く、生体適合性をもつ安定的な電極材料によるセンシングシステムが求められている。一方、材料としての「ダイヤモンド」は、レアメタルフリーの炭素という軽元素からなり、最高硬度や最高熱伝導率など特異な特性を示すため、工業応用に向けた研究開発が盛んであり、次世代半導体としての展開などが期待されている。
 受賞者は、次世代に活躍が期待される新規な機能材料として「ダイヤモンド」に着目し、その電極としての機能開拓に顕著な成果を挙げてきた(ダイヤモンド電極)(図1)。具体的には、高濃度にホウ素をドープしたダイヤモンド電極の「汚染物質センサー」、「汚水浄化」、「CO2 還元による有用物質合成」、クリーンな創薬プロセスを提供する「有機電解合成システム」(図2)等の環境改善への応用可能性の開拓、そしてそれら機能発現に関する基礎評価に成果を挙げた。さらに、がんバイオマーカー、脳内物質等の生体内高感度測定など、「医療への応用」に関してもその可能性を提示してきた。なかでも、重金属測定システムについては、センサーの実用化へと進んでおり、さらに現在多種の電気化学センサーへの展開も進んでいる。

図1

図2