市村学術賞

第50回 市村学術賞 貢献賞 -04

画期的な超高速イメージング法・分光法の創出及び産業・医療への展開

技術研究者 東京大学 大学院理学系研究科
教授 合田 圭介
推  薦 東京大学

研究業績の概要

 受賞者は2007年までにMITのLIGOグループ(2017年ノーベル物理学賞受賞)にて重力波検出器開発を通じて培った超精密レーザー計測技術を2007年から現在に至るまでUCLAと東京大学にて光学イメージング・分光分野に応用することで、従来技術とは異なる複数の画期的な超高速イメージング法・分光法を創出し、基礎科学分野から応用に至るまで幅広くフロンティア開拓に果敢に挑戦し、顕著な業績をあげてきた。また、それらの超高速イメージング法・分光法を生命科学、医学、創薬、グリーンエネルギーなどの様々な領域に適用し、これまで存在し得なかった異分野融合的な応用展開を行ってきた。
 具体的には、2009年以降に受賞者らが創出した全く新しい原理に基づく超高速イメージング法は、従来型のCCD/CMOSイメージセンサーに内在する速度限界を克服することで、数桁以上の速度向上を達成し、明視野と共焦点蛍光のモダリティで連続モード撮像の世界記録を打ち立てた(図1)。2012年以降にこのイメージング法を社会実装することで、高油脂生産能力を持つ微細藻類ユーグレナ細胞の検出(図2)と高油脂生産遺伝子変異株の創出、日本の寝たきり要因第一位である心筋梗塞や脳梗塞の原因となる血液中の血小板凝集塊の検出、血中希少がん細胞の検出、乳がん細胞の薬剤耐性を1細胞レベルの分解能で検出などを達成した。
 また、受賞者は、従来技術より数桁高速なラベルフリー分子計測技術を可能とする二種類の超高速コヒーレントラマン分光法を創出した。本技術を用いて微細藻類の1細胞解析を行い、微細藻類の代謝に細胞多様性があることを示した。さらに、超高速スキャンレートで指紋領域のラマン計測を行う世界記録も打ち立てた。

図1

図2