市村学術賞

第51回 市村学術賞 功績賞 -01

人体複合物理と生理応答の統合計算法と応用研究

技術研究者 名古屋工業大学 大学院工学研究科
教授 平田 晃正
推  薦 名古屋工業大学

研究業績の概要

 電磁界あるいは熱などの物理因子による生体影響は、安全性あるいは医療応用などの観点から多岐にわたり注目されている。例えば、環境電磁界による生体影響、デバイス設計、暑熱環境および光ばく露による熱中症リスク、医療応用における機能診断、治療システムの最適化などが挙げられる。一連の課題の共通点は、侵襲的な計測が不可能なヒト内部における複合物理現象のみならず、それにより引き起こされる生理応答が十分解明されていない点にあった。
 受賞者は、複数種類の医用画像を基に、数十におよぶ組織構成を識別した微小立方体から構成される計算人体モデルを自動生成する技術を開発した。また、人体モデルを構成する各微小立方体へ各組織に対応する電気・熱特性を与え、電磁界支配方程式と熱拡散方程式の離散化によって特定組織・部位における誘導電流および温度変化の計算を可能とする複合物理計算法を開発、その高速・高精度解析法をも考案した。加えて、体内誘導物理量にともなう電気生理応答あるいは温熱生理応答との融合計算法を開発した。
 開発手法による計算結果は、国際電磁界安全基準の最適評価指標の提案、ワイヤレス機器(全世界で数十億個)の許容送信電力、送電線からの環境磁界などの基準値策定など先導している。また、熱中症リスクに関する成果は、個々人に対応する新たなリスク情報として公開、リスク管理に応用されている。さらに、電気刺激治療・診断法のオーダーメイド医療への展開を可能とさせ、オーダーメイド医療にも展開、神経難病の機能診断などに応用されている。

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