人とコンピュータとの関係を探求するヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)の分野において、受賞者は数々の革新的研究、発明を行った。中でもSmartSkin(Rekimoto, ACM CHI2002)は世界に先がけてマルチタッチインタラクション手法を確立し、今ではスマートフォンやタブレットなどで触れない人はいない技術となっている。
SmartSkinは格子状に配された電極間の静電容量を計測することで、複数指の同時位置認識を可能にし、透明電極に適用することでディスプレイと一体化することができる。それまでのマウスを用いたGUI(Graphical User Interface)が、画面上の1点を指示するインタラクションであったのと対称的に、SmartSkinによるマルチタッチにより利用者が画面上の複数箇所を同時に独立に指示可能とする。
この技術により、画面上の複数のオブジェクトの同時操作や、オブジェクトに対する、つまむような操作で拡大縮小する(ピンチング)、回転や曲線編集などをモード変更なしで行うといった、多様かつ直感的な操作が可能になった。
2002年の論文発表当時、SmartSkinは、センサ面上にある複数の手指の位置形状を、静電容量の計測により、10個以上の指先位置を実時間で追跡できた。さらには、手全体の形状の動きを解析し、複数オブジェクトの同時操作のための新しい技術を開発するなど、技術的な面だけで無く、現在広範囲に利用されているスマートフォンやタブレット端末での複数指を使った操作手法までを提案した。この研究により、インタラクションの主要な手法がマウスからマルチタッチへと移行し、その後に登場するスマートフォンなどのインタラクションを大きく進展させ、世界中で広く利用されることとなった。
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