市村学術賞

第54回 市村学術賞 貢献賞 -02

酸化ガリウムデバイスの先駆的研究開発

技術研究者 国立研究開発法人 情報通信研究機構
未来ICT研究所 小金井フロンティア研究センター
室長 東脇 正高
推  薦 国立研究開発法人 情報通信研究機構

研究業績の概要

 世界的規模での省エネ・温室効果ガス削減に対しては、電力変換用半導体パワーデバイスの高効率化が有効な手段の一つである。一方、現状のシリコン (Si) を材料とするパワーデバイスの性能向上はほぼ限界に達しており、今後大幅な効率向上は期待できない。酸化ガリウム (Ga2O3) は、その非常に大きなバンドギャップに起因する物性から、Siに換わる高効率パワーデバイス材料として有望である。また、融液成長バルクから基板を低コストで製造できるという産業化に向けて重要となる利点も有する。このように、性能・コスト両面で強みを持つGa2O3のパワーデバイス材料としての可能性に受賞者は一早く着目し、数々のデバイス基盤技術を独自に開発してきた。
 受賞者らは、世界初のGa2O3トランジスタの動作実証を果たしたことを皮切りに、これまで数々のデバイスプロセス、エピタキシャル成長技術を開発し、それらをマイルストーンと位置づけられる新規デバイスの実現、優れたデバイス特性の実証につなげた。一連の報告に刺激される形で、Ga2O3研究開発は世界的に活発化し、Ga2O3は先行するワイドバンドギャップ半導体であるシリコンカーバイド、窒化ガリウムに続く、次世代パワーデバイス材料として広く認知されるに至った。受賞者らは、Ga2O3のパワーデバイス以外の応用の可能性を探ることを目的とした、高周波Ga2O3トランジスタ開発にも現在取り組んでいる。さらに、一連の研究開発成果・技術を移転したGa2O3ベンチャー企業の設立に貢献するなど、産業化に向けた活動も行ってきた。このように、多くの優れた研究業績、産業化に向けた活動等により、受賞者は現在までGa2O3デバイス・材料分野を牽引し続けている。

図1

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