市村学術賞

第55回 市村学術賞 貢献賞 -06

強度低下のない接合を実現する低温固相接合技術群の確立

技術研究者 大阪大学 接合科学研究所 接合機構研究部門
教授 藤井 英俊
推  薦 大阪大学

研究業績の概要

 溶接・接合は、モノ作りの基本であり、あらゆる産業分野で用いられている。モノ作りの分野では、割れなどの発生によって、溶接できない素材が多数あり、材料開発の範囲を大きく制限してきた。
 受賞者は、固相かつ低温で行う接合技術を開発し、世界で初めて変態を伴わない「無変態接合」を実現した。強度低下を起こさない接合(完全接合)を実現によって接合部を考慮した設計が不要となったため、幅広い分野でのモノ作りの設計・製作に大きな変革をもたらすことが期待されている。
 (1)無変態摩擦攪拌接合技術(FSW)の確立:これまでAl合金などの低融点金属に限られていたFSWを、構造材料の9割以上を占める鉄鋼材料に適用可能にした。回転ツールによる被接合材への強加工がαフェライト相の再結晶温度を低下させる点に着目し、接合温度をA1点(変態が起きる温度:723℃)以下の温度で接合する技術を確立した。
 (2)低温線形摩擦接合技術(LFW)の確立:鉄鋼材料同士を直接、摩擦させる、回転ツールの不要なLFWを用いて、A1点以下の温度で接合する技術を確立した。圧力によって塑性変形、接合温度を精度よく制御する点が画期的であり、5年前に開発された技術にも拘わらず、複数の低温摩擦接合装置が販売されている。
 (3)固相抵抗スポット接合技術の確立:自動車産業で用いられる2枚の板を銅電極で挟み通電する「抵抗スポット溶接」に置き換わる手法として、円筒状の銅電極と超硬合金製の中心加圧軸からなる二重電極構造を用いることで、固相で接合が達成される新技術を開発した。本接合技術は、潟_イヘンによってシーズ展開され、国内外の多数の自動車メーカーから大きな反響が得られている。

図1

図2