市村学術賞

第52回 市村学術賞 貢献賞 -01

高臨界電流密度を有する超伝導材料の作製と応用展開

技術研究者 成蹊大学 大学院理工学研究科
教授 / リーディングリサーチャー 三浦 正志

研究業績の概要

 超伝導材料は、冷やすことで電気抵抗ゼロで大電流を流せる唯一の材料であるため、核融合発電、核磁気共鳴イメージング(MRI)、核磁気共鳴装置(NMR)、リニア、超伝導送電、航空機用超伝導モータなど様々な応用が期待されている。これらには、抵抗ゼロで流せる電流密度である臨界電流密度(Jc)の飛躍的な向上が求められている。主に ①超伝導体内に侵入する量子化磁束の運動を抑制する磁束ピン止め点(非超伝導)の導入や②キャリア密度等の制御による超伝導電子密度の向上の融合による新しい材料設計指針が必要である(図1)。しかし、多くの超伝導材料では、磁束ピン止め点を導入することで結晶性やキャリア密度が低下するため、①②両方を融合することが難しくJcは頭打ちとなっていた。
 受賞者は、銅酸化物高温超伝導材料や鉄系超伝導材料を対象として、独自の新しい材料設計指針を基に、結晶性やキャリア密度を低下させることなく磁束ピン止め点を導入する技術に加えて高キャリア密度を実現する技術を融合し、世界最高の磁場中Jc特性を達成した。また、本指針により多様な超伝導材料において飛躍的な磁場中Jc向上に成功し、『新しい普遍的な材料設計指針』を実証した。
 本技術をもとに企業と共同で高特性銅酸化物超伝導線材、電流リードや送電ケーブルの製品化に成功した。更に昨年、世界で初めて液体窒素使用回転試験に成功した全超伝導航空機用モータにも本技術超伝導線材が使用された。今後、MRI、NMR、リニア、超伝導送電、全超伝導モータ、核融合発電、量子コンピュータ、単一光子検出器、次世代超伝導送受信フィルタな機器への応用が期待され更なる社会的貢献が期待できる(図2)。

図1

図2