市村地球環境学術賞

第51回 市村地球環境学術賞 貢献賞 -02

高信頼性と高性能を両立する全固体リチウム電池の開発

技術研究者 国立研究開発法人 物質・材料研究機構
エネルギー・環境材料研究拠点
拠点長 高田 和典
推  薦 国立研究開発法人 物質・材料研究機構

研究業績の概要

研究の背景
 リチウムイオン電池は小型・軽量の蓄電池として携帯情報機器の電源に広く使用され、現在では温暖化防止に向けた電気自動車や電力貯蔵での利用も期待されている。しかしながら、リチウムイオン電池に採用されている有機溶媒電解質は可燃性物質であるうえ、耐用年数などの性能を満足するものではなかった。固体電解質を用いた全固体化は、リチウムイオン電池に高い安全性を付与するもののみならず、大型電池に求められる長寿命化をも達成するものと期待されてきたが、全固体電池の性能は低く、実用化には遠く及ばないものであった。

研究技術の概要
 本研究では、まず固体電解質の格子骨格と電気化学的安定性の相関を明らかにすることで、黒鉛負極とLiCoO2正極の組み合わせを全固体電池においてはじめて可能とした。さらに、電池の出力性能を決定する反応律速段階が正極活物質と硫化物系固体電解質との接触界面に発生する抵抗成分であり、その起源が界面に形成されるリチウムイオンの欠乏層であることを突き止めた。この知見を基に、リチウムイオン欠乏層形成に対する緩衝層として作用する酸化物系固体電解質の薄膜を介在させた新規な界面構造を提案した。この界面構造の採用により、全固体電池の低出力の原因であった界面抵抗を大幅に低減することに成功した。

特徴と効果
 これらの研究により全固体リチウム電池の性能は液体電解質を使用するリチウムイオン電池に匹敵するものとなった。特に、全固体化が最も求められている電気自動車用電池の分野では実用化研究の段階を迎えている。

図1 図2