市村地球環境学術賞

第53回 市村地球環境学術賞 貢献賞 -02

塗布型ペロブスカイト半導体材料を用いた高性能フィルム型太陽電池の開発

技術研究者 京都大学 化学研究所
教授 若宮 淳志
技術研究者 同大学 同研究所
教授 金光 義彦
推  薦 京都大学

研究業績の概要

 ハロゲン化金属ペロブスカイト半導体(ABX3型結晶:A=1価カチオン、B=金属イオン、X=ハロゲンイオン)を用いた太陽電池が、塗布で作製可能な次世代太陽電池として注目を集めている。本研究では、材料化学および物性物理学の視点から、本半導体の材料開発と物性の学理究明に取り組み、以下の研究業績によりペロブスカイト太陽電池の開発研究の推進に大きく貢献した。
1) 再現性良く高品質なペロブスカイト半導体膜の作製を可能にする「独自の高純度化前駆体材料」を開発した。これらの材料は、国内メーカーから市販化し、本太陽電池の開発分野における必要不可欠な標準材料として国内外に広く普及している(図1)。
2) また、先端分光法を用いて、ペロブスカイト半導体がもつ特異な光物性を解明するとともに、本太陽電池の発電原理を明らかにした。
3) これらの物性と発電原理の解明に基づいて、本太陽電池の高性能化のための電荷回収層材料の分子設計指針を提唱し、独自有機半導体材料の開発によりその有用性を実証した。
4) さらに、溶液の塗布過程で生成する中間体の構造・物性解明に基づいて、新しい塗布成膜方法を開発し、20%を超える光電変換効率を達成した。また、最近では独自に開発した成膜技術により鉛フリー材料を用いた太陽電池の高性能化にも成功している。
 これらの基礎研究成果に基づいて、2018年には大学発ベンチャー企業を設立してデバイス製造技術開発にも取り組み、フィルム型太陽電池モジュールの開発にも成功した(図2)。
 本フィルム型太陽電池は、軽量・フレキシブルであることに加えて低照度条件下でも高い発電効率を示す。これまで困難であった非住宅の重量制限のある屋根やビル等の壁面、農地・休耕地などへも「どこでも電源」として導入が可能であり、新たな再生可能エネルギー源として普及することでCO2の排出を抑制し(~9280万t/年)、温暖化対策にも大きく貢献するものと期待される。

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