第55回 市村地球環境学術賞 功績賞 -01
脱炭素にむけたカーボンプライシングの経済分析:定量的・実証的アプローチ
技術研究者 | 早稲田大学 政治経済学術院 教授 有村 俊秀 |
技術研究者 | 青山学院大学 経済学部 教授 松本 茂 |
技術研究者 | 京都産業大学 経済学部 教授 武田 史郎 |
推 薦 | 早稲田大学 |
研究業績の概要 |
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カーボンニュートラルの達成のため、政策手段として炭素税や排出量取引といったカーボンプライシングに注目が集まっている。二酸化炭素に値付けをして、企業や人々の行動を炭素排出の少ない方向に、効率的に誘導しようというものである。欧州を初め、世界各国で導入が進むが、日本では排出量取引は東京都と埼玉県のみが導入しているだけであり、炭素税も税率が低く、カーボンニュートラルには不十分である。本研究チームは、日本におけるカーボンプライシングの有効性とその効果、政策オプションを実証的、かつ経済学的・定量的に分析した。まず、科学的根拠に基づく政策評価・立案(Evidence-Based Policy Making)の視点から、東京都と埼玉県の排出量取引の削減効果(図1)や、経済影響を定量的・実証的に分析した。その結果、排出量取引の削減効果を示すとともに、負の経済影響がないこと、イノベーション促進効果があることを示した。また、産業の国際競争力に配慮したカーボンプライシングの制度設計とその効果について経済モデルを用いて示した。さらに、家庭部門での費用負担の増加の程度、地域間・世帯間での配慮方法についても定量的に示した。今後の大幅削減に向けて、応用一般均衡分析を用いて、排出削減と経済成長の両立の可能性について検証した。特に、炭素税の二重の配当政策に注目し、炭素税収を法人税減税や消費税減税に充てることにより、大幅な排出削減と経済成長が両立しうることを定量的に示した(図2)。 |