市村地球環境学術賞

第55回 市村地球環境学術賞 貢献賞 -02

太陽熱・赤外線エネルギーの高効率利用のためのセラミックス微細構造の研究

技術研究者 国立研究開発法人 物質・材料研究機構
国際ナノアーキテクトニクス研究拠点
グループリーダー 長尾 忠昭
技術研究者 同機構 同拠点
主幹研究員 石井 智
推  薦 国立研究開発法人 物質・材料研究機構

研究業績の概要

 太陽放射や物質の熱放射は、あらゆる場所で生じるエネルギー移動現象であり、燃料の要らない、クリーンで持続可能なエネルギー源として、有効利用が強く望まれている。受賞者らは、太陽光や熱放射エネルギーの有効利用に、材料物理学とナノフォトニクス融合の視点から取り組み、高効率な太陽熱利用技術や波長制御された赤外線光熱変換技術を創出し、熱放射利用研究に大きな進展をもたらした。以下にその技術の概要と効果/実績を示す。
 1) 量子力学的Köhn-Sham方程式による電子物性・光物性予測技術と、Maxwell古典電磁気学によるナノ構造の機能予測技術とを統合し、材料設計の方法論を提案した。
 2) 上記の応用例として、表面微細構造を持ち、特定の波長で熱放射する耐熱セラミック材料や、セラミックスによる多層膜フォトニック材料を提案した。1200℃以上の超高温で動作し、スペクトルの制御された省エネな赤外線エミッターを開発した。
 3) 太陽光を完全に吸収し、高速水蒸留に利用できるセラミック微細構造を開発し、エネルギー変換効率92%を達成した。
 4) 上空への受動的な熱放射である放射冷却を利用して屋外で24時間昼夜続けて発電する創電デバイスを開発した。
 本研究により、太陽熱利用、省エネ加熱加工や熱光発電、ユビキタスな自家給電式受動センサーへ向けた基盤技術など、Society5.0に向けた新しい基盤技術の創成に大きく貢献した。

図1

図2