市村地球環境学術賞

第57回 市村地球環境学術賞 功績賞 -01

革新的エネルギー技術を考慮した脱炭素シナリオの構築と経済影響

技術研究者 京都大学 大学院工学研究科
教授 藤森 真一郎
技術研究者 同大学 同研究科
助教 大城 賢
推  薦 京都大学

研究業績の概要

 受賞者は、世界全域及び日本を対象として社会経済とエネルギーシステム、温室効果ガス排出のモデル化を行い、今後数十年といった長期の脱炭素化社会実現のための具体的な将来像、並びにその社会経済的な影響の定量化を行ってきた。その核は、エネルギーシステムの詳細を扱うエネルギーシステムモデルと経済全体を扱う経済モデル、家計消費行動を詳細に描く家計消費モデルの3つであり、以下3点で先駆的な取り組みを行った。

A) エネルギーシステムモデルで時間別の需給バランスを表現し、蓄電池、余剰電力の水素電解、デマンドレスポンス等の電力需給を表現した
B) 経済モデルに初めて直接空気回収技術、水素関連技術を導入した
C) 所得階層別家計を扱うことで貧困・格差と気候変動対策の関係を扱えるようにした

上記モデルを有機的に結合させ、以下2点の社会的に重要な科学的知見を明らかにした。

革新的なエネルギー技術が脱炭素化に果たす役割とそれら技術の導入条件
エネルギーシステム変革がもたらす経済・貧困・格差等の社会への影響

 特に配慮が必要な低所得者への悪影響とそれに対する対応
エネルギーシステムの詳細と社会経済を整合的に扱うその手法は、創造性に富み、独創的かつ卓越した研究業績を上げ、世界の研究を牽引している。また、これまでの研究成果は気候変動に関する政府間パネル(IPCC)報告書へ直接貢献するとともに、国内外の脱炭素化社会へ向けた環境政策に直接・間接的に貢献し社会的に大きな影響を与えてきた。

図1