市村地球環境学術賞

第58回 市村地球環境学術賞 貢献賞 -01

炭素循環を支える機能性バイオベース高分子の社会実装

技術研究者 大阪大学 大学院工学研究科
教授 宇山 浩

研究業績の概要

 近年、地球温暖化や生態系劣化が深刻化する中、脱炭素社会の実現に向けた炭素循環型材料の確立は喫緊の課題となっている。特に高分子材料分野では、石油資源への依存と廃棄プラスチックによる環境負荷が問題となる一方、従来のバイオベース材料は機械特性や耐久性に課題があり、社会実装の制約となっていた。また、自然資本を再生するネイチャーポジティブの実現に向け、未利用バイオマスを活用し資源循環を深化させる材料設計指針が求められていた。
 受賞者はバイオマス資源の構造特性を最大限に引き出す独自の設計により、高度な材料機能と環境調和性を両立する材料群を多数創出した。具体的には、カシューナッツ殻液を活用したホルマリンフリー人工漆の創製や、植物油脂を組み込んだ高い耐久性を有する屋根用塗料の製品化に成功した。また、ひまし油由来の構造を導入した分岐状ポリ乳酸を開発し、飛躍的な耐衝撃性向上により汎用プラスチックに匹敵する機械特性を達成した。さらに、デンプンを基盤とした海洋生分解性プラスチックやセルロースの界面特性を精密制御する複合材料技術も確立しており、未利用バイオマスの高付加価値化を一貫して推進してきた。産業界との協働を通じて実装基盤も着実に構築され、技術の持続的発展に向けた好循環が生まれている。
 これら業績の最大の特徴は石油由来材料の単純代替にとどまらず、バイオマスの特性を活用した高機能化と廃棄資源の循環利用を高度に融合させた点にある。屋根用塗料は長年にわたり市場で採用され、継続的な普及を通じて温室効果ガス排出削減に寄与している。また、受賞者は多数の企業が参画する共創プラットフォームを主導し、海洋プラスチック問題の社会実装を加速させている。さらに、ベンチャー設立や万博出展、循環型コンソーシアムの始動など、産学官連携による新産業創出にも大きく貢献しており、循環経済分野に具体的な解決策を提示する先導的技術基盤を形成している。

図1

図2