市村地球環境学術賞

第58回 市村地球環境学術賞 貢献賞 -02

ナトリウムイオン蓄電池およびカリウムイオン蓄電池の先駆的研究

技術研究者 東京理科大学 理学部第一部
教授 駒場 慎一

研究業績の概要

 再生可能エネルギーを最大限活用し、地球温暖化を抑制するためには、安全・安価で大容量の蓄電池が不可欠である。現行のリチウムイオン電池は1991年に商品化され、広く普及しているが、リチウムやコバルトなどの希少資源の偏在性・価格変動が、持続的利用の制約となっている。
本研究では、リチウムに代わる同族元素に着目し、中でも資源的に豊富なナトリウムおよびカリウムを用いた新型蓄電池の基礎研究から実用化に資する成果を上げた。2000年代まで実用化が不可能と言われていたナトリウムおよびカリウムイオン電池について、電極・電解質の基礎研究を地道に重ね、世界で初めて全電池作動を実証した。この成果は次世代蓄電池研究の潮流を大きく変えるものであった。
 リチウムイオン電池と類似の作動原理と構成(図1)でありながら、海水や地殻中に無尽蔵に存在するナトリウムイオンの脱離・挿入反応で駆動する蓄電池は、資源制約を解消できる大型蓄電用途のバッテリーとして期待される。図2に示すように、エネルギー密度が十分に高く、希少元素や毒性元素が使用されていないため、持続可能な電池材料で構成できることが最大の特徴である。その成果を基に、2023年に中国で電動車の電源として実用化が始まり、日本でも高安全で低温動作が可能なモバイルバッテリーとして2025年3月に商品化され、その用途は世界的に拡大している。カリウムイオン電池は、より高い電圧で作動し、カリウムイオンの高速拡散を生かした優れた急速充放電性能を実証し、欧米で実用化研究が急速に進んでいる。
 受賞者は世界に先駆けて両電池の基盤材料の開発、電極材料、電極・電解質界面反応の解明、機械学習を用いた物質探索など、多面的アプローチにより分野を先導してきた。これらの研究成果は、温室効果ガス削減に資する次世代エネルギー技術を提供し、地球環境問題の解決に大きく貢献するものである。

図1

図2