AIによる自動運転やロボット等による自動化が急速に進む中で、安全性の担保は社会的にも非常に重要な課題となるが、信頼性に関わる部分の非破壊検査は、適切な検査方法が少なく、あまり実施できていなかった。X線検査装置は非破壊での検査が可能ではあるが、従来使われていた間接変換(シンチレータ)型のX線センサでは光散乱ボケや量子効率の問題から感度と解像度の両立が難しく、また従来のフォトンカウンティング回路では、初段の電流電圧変換で大きな増幅率が必要となる為、ラインセンサ用に集積したLSI部だけで数十Wの消費電力となってしまっていた。
本開発では、X線の直接変換素子であるCdTeを独自のレーザードーピング手法により高性能なデバイスにするプロセスと、独自のフォトンカウンティング方式を組み合わせる事で、感度と解像度のトレードオフを解決したX線ラインセンサを実現している。レーザードーピングを用いたpn接合型CdTeセンサは、光散乱ボケが無く低リーク電流を実現する事ができる。また独自のチャージ操作型フォトンカウンティング回路は、従来のフォトンカウンティング回路に比べて大幅な消費電力の低減と、ダイナミックレンジの拡大ができる。本開発ではフォトンカウンティングLSIの設計・試作とCdTeセンサを搭載した超解像ラインセンサモジュールの試作を行い、モジュールとしての動作検証と発熱などの影響をシステムレベルで確認を行う。
本開発により従来の100倍以上の感度と4倍の空間分解能を持つX線ラインセンサが実現できれば、従来のX線検査装置よりも高速、高精細な検査が可能になり、様々な分野の検査装置への応用が期待される。またX線センサが高性能化する事により、X線検査装置の小型、低コスト化が期待でき、X線検査の導入が進む事による社会全体の製造品質底上げも期待される。
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