骨を作り出す能力が衰えている高齢者の骨折等による骨損傷・欠損の治療に、損傷骨の補填材(骨補填材)としてさまざまな人工骨開発が進んでいる。しかし、手術時の操作性や使用できる患部に制限があるなどの課題も多い。本申請では、これらの課題を解決する目的で新しい骨補填材の製品化を目指している。 骨補填材として使う既存品の骨ペーストは、固化後に骨やインプラント材と固着、接合する材料であるが、適用直後の骨組織に接着しないなどの問題が生じる場合がある。今回の開発品は、骨やインプラント材に直接接着して接合する性質を持つ新しい材料を用いており、骨親和性と骨吸収性を促し、かつ、新生骨との密着性・生体固着性を持たせることが期待される骨ペーストである。β型リン酸三カルシウム/シリカ固溶セラミックスを独自の手法で加工して開発した50μm多孔性微粒体(粉剤)と、この粉剤を用いることでシアノアクリレート混合接着剤(液剤)の利用を可能にした。これら粉剤と液剤を混練して開発した骨ペーストは、優れた骨吸収性と接着性の両方の性質を持つ。GLP基準による骨充填材の製造工程の確立と、使う直前に混練して患部に注入するための手動式整形用外科用注入器(デリバリーシステム)開発が本申請の課題である。これと合わせて現在進めている生物学的安全性試験による試作品の生物学的物性を確立することで、今回開発する新規骨ペーストの製品化を目指している。 新しい概念をもつ人工骨(骨充填材)の開発であり、人工骨(再)置換術の術式、骨腫瘍骨欠損部の術式、破砕骨折の術式など、様々な医療への貢献が期待できるとともに、本開発製品が輸出医療機器になることで新規市場の開発が期待できる。
|