有機エレクトロニクス材料やハイバリアフィルム・蒸着フィルムなど、真空蒸着を用いたフィルムの製造が多くなってきているが、大気中と同じように摩擦によって帯電した絶縁材料は、放電時にフィルムにピンホールを空けたり、デバイスを破壊したり生産障害を引き起こす。一般的に除電器によって除電する対策が取られるが、高真空中では、イオンを生成するためのガスがほとんど無いため、除電用のイオンを生成できず除電を行うことができない。本開発では、このような高真空下でも使用可能な真空用除電器の開発を行う。 図1に真空装置での使用形態を示した。JAXAが小惑星探査機「はやぶさ」で開発したマイクロ波型プラズマ源の中和器技術を応用して、高真空下の生産工程で機能する除電器を開発する。図には真空チャンバ内で帯電した被除電物を放電するメカニズムも記した。図2は、本開発の真空用除電器の構成図である。除電器であるマイクロ波プラズマ源を駆動するRF電源、導入ガスのマスフローコントローラ、全体をコントロールするPLC等で構成される。 今後、次世代ディスプレイなどの電子材料系の基板として利用が広がっているフィルムの真空工程での除電は非常に重要かつ必須な技術であり、実用化が期待される。また、非常に省電力で高い効果を出せることも本技術の特徴である。
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