家庭ごみや事業系から排出される一般廃棄物は、自治体所有の焼却炉により焼却処理されており、その焼却炉より排出される焼却主灰は、年間237万トン(2015年度環境省統計)と膨大な量である。これら一般廃棄物焼却主灰の90%は埋め立て処分(管理型埋立)されており、化合物組成が近似しているセメント基材(天然粘土)への代替率(リサイクル率)は10%程度と極めて低いのが現状である。 セメントへのリサイクル率が低い主な要因として、高濃度の塩素(1〜2wt%)が含有されていることがある。焼却主灰をセメント基材化するためには、塩素濃度を0.2%以下にする必要があるが、焼却主灰中の塩素化合物は、そのほとんどが焼却炉中で生成する「フリーデル氏塩」と呼ばれる非水溶性の塩素化合物であることが塩素除去を困難にしている。 本技術開発は、焼却主灰中に強固に含有されている「フリーデル氏塩」を、メカノケミカル反応という非水系のドライプロセスで水溶性化合物化し、その後水洗除去(低減化)することにより、焼却主灰を全量セメント基材として活用可能とする技術の開発である。 3CaO・Al2O3・CaCl2・10H2O → 2Ca(OH)Cl(水溶性化合物)+2Al(OH)3+Ca(OH)2+4H2O 本技術の成果としては、全国の年間埋立量510万m3/年の約1/2量(237万m3/年)が減量化され、再資源化が可能となると推算できる。さらに焼却主灰をセメント用粘土の代替として全量使用可能な基材に変換してリサイクルすることにより、資源循環型社会の実現に寄与できる。
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