セルロースナノファイバー(CNF)は軽量で高い機械的強度を有するなど多くの有用な特性を示すことに加えて、木材から取り出されることからカーボンニュートラルであり、かつ日本に資源が豊富であるため、10年ほど前に報告されて以来、高い注目を集めているナノ素材である。ただ現行の製造方法ではコスト高が避けられず、用途開発が停滞している状況にある。
本課題では有機材料の乳化重合のために申請会社がコア技術として利用している亜臨界水処理をパルプの分散した水に適用し、高品質のCNFまで解繊する技術を確立することを目指す(図1)。亜臨界水は有機溶剤並みの溶解性を発揮し、有機物の加水分解を促進するという知見に基づく提案であり、予備的検討により200℃前後、25MPaの条件で処理すると、数十秒でナノレベルまで解繊できることが明らかになっている(図2)。本技術開発では亜臨界水の特性を利用し、連続フロー式でCNF製造を可能とする装置の開発を行う。これにより、従来は数十回の繰り返し処理が必須となる高圧ホモジナイザーを用いる機械的解繊法や、化学薬品で酸化させる化学的方法と比べて、圧倒的に迅速で大幅な低コスト化が期待できる製造法を確立できる可能性がある。
CNFはその優れた特性を生かして、自動車、家電、建築材料など多くの用途が期待されている。本技術開発により、高品質のCNFを安価に製造することが可能となれば、これらの応用展開が一挙に進展する可能性を秘めている。
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