我が国は、世界でも 3番目の豊富な地熱資源国と言われており1960年代から地熱発電が行われてきた。しかし、発電効率が小さい、建設コストが高い、建設が自然環境や景観を損ねるなどの問題があり、当初の想定ほど導入は進んでいない。高温泉を湧出する温泉地に地産地消の発電所を作るというあり方は、地熱活用の有望な解ではあるものの、未利用の高温温泉では析出スケールの付着が、長時間運転時の課題となり、その除去の労力とコストが無視できない。
技術開発者は、これまで低沸点媒体でタービンを回すバイナリー発電プラントを開発してきた。更に、その一次熱交換器として従来型の金属伝熱壁を持つ熱交換器ではなく、スケール析出が多い温泉熱源に有効となる温泉と相互に溶解せずスケールも溶解しない媒体により直接接触熱交換する方式を発明した。この方式によりスケール析出による熱交換器の詰まり、劣化、性能低下を根本的に避けることができる。これまで小型装置により基本動作を確認し、効果的な混合や装置各部の構造等を検討してきたが、実用性を実証するためにはスケールアップが重要な課題となる。また従来の試験では、熱媒体としてフッ素系液体を用いることで、良好な熱交換性能、分離性能を示すことを把握したものの、長時間運転に伴う液体損失と、それによる温暖化効果を考慮したシステム設計が課題であった。本開発においては、温暖化係数が小さい液体を用い、その損失を監視しつつ温泉熱源の変動に影響されずに安定的に発電が可能なパイロットシステムを開発し運転実証する。発電量当たりの温暖化係数が太陽光発電の2~3倍以内、火力発電の1/6~1/10以内、運転開始後8年で売電収益が設備費及び運転費用と釣合う経済性の高い1年間メンテナンス不要のシステムを実証できれば、各地の未利用温泉資源を地産地消に活用する新たなモデルの普及が見込める。
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