iPS細胞の開発やマイクロ流体デバイスの技術向上などに伴って、薬物の作用を細胞レベルで調べることが多くなってきた。しかし、細胞レベルの研究では動物個体を用いた研究のように、組織間相互作用や副作用を検証することができていない。本開発では、細胞レベルの解析で組織間相互作用や副作用の検証を可能にする新しい細胞培養システムの開発を目指す。
汎用性のある市販のウェルプレートとセルカルチャーインサートを用いて、一つのマイクロポンプで繋ぐことで培地がウェル間を循環できる細胞培養システムを考案した(図1)。異なるウェルには異なる組織の細胞を入れることが可能となり、従来のシステムでは1細胞しか扱えないのに対して、開発するシステムでは複数細胞が扱えるため、生物学的に解析できることが大幅に広がる利点がある。密閉型磁気結合ポンプと高周波溶着技術を利用することで、密閉性の高い循環型細胞培養システムとなるため、CO2インキュベーターやクリーンベンチなどの研究機器が不要となる。また、本システムは、ディスポーザブル性が高く、流路設計が簡便になるなど、従来のシステムにない利点がある。
今回開発しようとする「密閉・循環型細胞培養システム」(図2)は、これまでの発想になかった全く新しいシステムである。細胞レベルの研究で、薬物の組織間相互作用や副作用が検証できるシステムの開発は画期的であり、創薬における期間短縮やコスト低減が可能になるなど、創薬・再生医療分野に対して多大な貢献が期待できる。日本のものづくり技術が先進医療分野に貢献できることは社会的にも意義深い。
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