独特のかすれ模様が魅力で、重要無形文化財でもある久留米絣は、近年は市場の縮小が著しく、技術の継承に困難を来たしつつある。本技術開発は、従来は手作りに限られた3色染め分けを低コスト化して市場に投入できるようにし、工芸品としての市場を拡げ、久留米絣産地の振興に繋げることを狙っている。
久留米絣の特徴の多くは、防染のための「括り」によって生み出されている。久留米絣では古くから1段括りの機械化によって2色柄の低コスト化を達成しているが、熟練技術者が常に付いている必要があり、また括り機の老朽化が著しい。本技術開発は、3色染め分けが可能な2段括りを機械化し、かつ図案から括り位置を生成するソフトウェアを開発して、2段括り機の制御を自動化しようとするものである。開発する装置は、様々な図案に対応するために括り機構を二組設け、独立して括りの位置を調整できる自由度を持たせている。また糸の張力を制御してかすれ具合を調整できるようにし、さらに糸切れセンサを設置して糸切れ時にただちに括り作業を停止できるようにして、省人化および歩留まり向上を目指している。
本装置によって、2段括りを用いた3色染め分けのコストを抑え、より意匠性の高い図案の久留米絣を、価格を抑えながら市場に投入できるようになる。市場を拡大し、産地を活性化することで、新たな人材を呼び込み、技術を継承していける。この開発は、地域の雇用創出、活性化のみならず、文化財の保護にも貢献することが期待される。
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