これまで申請企業は“人々が天寿を全うする社会の実現“というvisionを掲げ、早期がん早期発見のための検査の開発や新薬開発のためのバイオマーカー探索を行ってきたが、今回、個別化医療に資する新しい検査の開発を目指し、脊髄性筋萎縮症(SMA)という難治遺伝性疾患に着目した。
近年様々な治療薬が開発され、SMAは治る病気になりつつあるものの、治療開始が遅れると治療効果が乏しくなるという問題を抱えている。そのため、可能な限り早い時期でのスクリーニング検査が重要となるが、残念ながら日本国内ではなかなか導入が進んでおらず、また一部地域で行われている検査も、専門性が高いが故に費用が高く、結果判定まで時間をかなり要するという課題を抱えている。その原因の一つとして、SMAの原因遺伝子SMN1と非常に類似したSMN2遺伝子の存在が挙げられる。この課題を克服するため、試行錯誤の末にSMN1のみを特異的にPCR増幅するプライマーを開発し、更にLateral Flow Assay(LFA)を組み合わせることで、低侵襲性・簡便性・迅速性の3条件を兼ねそなえた新しい検査法の基盤を確立した。今後はさらに結果判定の正確性を担保するため、AI判定・結果管理アプリも開発する予定である。
SMA患者にとっては、治療開始までの数日の違いがその後の人生のQOLを大きく左右する。産科病院やクリニックレベルでも実施可能な、簡便かつすぐその場で結果が出る検査方法が確立すれば、全ての新生児に迅速SMAスクリーニングの機会が提供でき、最短で適切な治療開始につなげ、SMA患者も健常者と変わらない生活を送ることのできる世界が実現できると確信している。
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