ヒト腸管内には数百種類以上、およそ四十兆個にも及ぶ腸内細菌が生息しており、これら腸内細菌およびそれらが作り出す物質(代謝物質)はヒトの健康維持や疾患発症に大きく関与している。ある種の食品や素材は特定の腸内細菌により代謝され効能を発揮することから、腸内環境を解析することでその人にとって効果の高い食品の判定が可能となる。
本技術開発では、どのような食品や素材が腸内環境に影響を与え健康につながるのか、を予測するためのデータベース構築を最終目的としている。この技術を基盤とし食品会社の商品開発を支援する新ビジネスモデルを提案しようとするものである。この目的のためには、食品(ないしその成分)と腸内環境の関係を明らかにする必要があり、その網羅的解析を可能とする腸内環境評価系の確立が不可欠となる。しかし、腸内環境を試験管内で再現性よく実現することは容易ではなかった。開発者らはすでにヒト便を腸内環境を模した条件で培養する系を上市している。今回、多数の食品ないし代謝物質に対応したハイスループットな腸内環境評価系を作出し、腸内環境応答を解析することで、両者を関係づける大規模データベース構築を目指している。
健康食品ブームには、ややもするとサイエンスの裏付けに乏しい(都合の良いところだけを出している)と思われる側面があるが、本提案は学術的基盤がしっかりしており、この取り組みには社会性・公益性が認められる。開発者らはすでに、食品メーカー等を相手にコンサルティング事業でビジネスを展開しており、業界の信頼を得ていることがわかる。明確なエビデンスに基礎をおいた機能保健食品の開発を通じ、人々の健康増進への貢献が期待できる。
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