水素は、燃料電池やタービン等により電気に変換するためのエネルギー源としても、半導体特に化合物半導体製造時のプロセスガスとしても重要な原料であるが、いずれにおいてもガスの純度は重要な要求となっている。このため、現在は原料ガスの純化のために、圧力スィング吸着法、深冷分離法といった吸着分離法に加えて、パラジウムへの水素の固溶を利用した膜分離法が実用されている。これらにはいずれも一長一短があり、更に、低コストで、大量の高純度水素ガスを精製できる装置システムが望まれている。
申請者は大分県の機械工業の若手経営者らが、大分高専の研究成果の活用展開を目指し立上げたベンチャーで、金属膜分離法に着目し産学官連携による検討を進め、パラジウムに代えて、レアメタルとは言え埋蔵量が多く、重量当り価格が3ケタ程安価なバナジウムを活用可能、その際に温度・圧力の制御により脆化することなく水素を透過する、膜表面の触媒担持条件や、膜の機械的構造とその加工法及び金属組織の効果的制御法、膜保持デバイスの構造の検討等を行って、従来パラジウム膜に比べ遥かに肉厚な膜を用い、4Nボンベガスから、数L/分オーダーで6Nガスを精製するデバイスを試作し、連続運転による耐久性の検証を行なってきた。
本開発では、化合物半導体プロセスの要求である、8N純度のガスを100L/分以上の流量で供給できる装置を開発試作する。これまで試作したデバイスにおける純度低下要因である、水素吸蔵時の膜の膨張に伴うシールの課題を解決しつつ、複数枚のデバイスを並列に最適な同一条件で作動させるための機構・装置の開発を行い、安定動作を検証する。本開発が成功すれば、半導体の製造コストの低下に大きく寄与することが期待される。のみならず、本方式は、低分圧ガスからの高純度水素分離が可能で、燃料電池において劣化要因として課題となるCO等の不純物除去に強いことから、廃棄物由来の低品質ガスを含めた広範囲のガスの、水素エネルギーネットワークへの活用加速に繋がるとも期待される。
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