視覚障がい者は晴眼者と比べてケガや事故を引き起こす確率が著しく高く、周囲の環境が認識できない為に生活の質が低く、単独では日常生活を送るのも難しい。介護の必要な視覚障がい者の行動をサポートする方法は先進国、後進国を問わず白杖と盲導犬のみであり、盲導犬は数が少なく希望者の一部しか利用できず、白杖は触れた部分の状態しか分からない。加えて、介助者の50%は介護責任のため就労を諦めているという問題がある。そこで、視覚障がい者に視力を使わずに周囲の環境を「正確に」「感覚的に」認識できる新しい装置の開発が求められていた。
本開発の装置は、視覚障がい者の約9割が本人の意思通り自由に動かせる眼球を持っていることに着目し、着用者の視線をトラッキングし、視線とステレオカメラの距離情報から、視線先対象物までの距離と方向を算出し、振動及び音響にて通知する仕組みであり、周囲の環境を視力を使わずに認識することができる独創的なアイディアに基づく装置である(図1)。加えて、本装置は、色情報、テキスト読み上げ、タグの読み上げ、サポータと視野を共有しながらの会話機能なども備えた、メガネ型の小型で多機能な視覚障がい者補助装置である(図2)。
本装置の開発により、視覚障がい者は、介助者に付き添われることなく安全に移動することが可能となり、生活の質の向上はもとより、視覚障がい者の社会進出の可能性が大きく広がることが期待される。同時に、介護のため就業を諦めていた介助者の社会への復帰やインフラ整備費用の削減など様々な波及効果も期待され、社会的価値は非常に大きい。
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