国内の年間生産量が約100万tに上るアルミダイカスト製品の製造では、約6万t(6%)のアルミ切粉が発生している。この切粉を自社で再利用できれば大きなコストダウンが図れるが、アルミ切粉の溶解は容易には行えない。従来のロータリーキルンを用いた方法やブリケットへ成形する方法では粉塵爆発や可燃性ガス爆発などが発生するリスクが高いだけでなく、大量のCO2が発生し環境面でも問題があり、設備の自社導入の障壁となっている。
本技術開発では、アルミ切粉を効率よく安全に連続処理が出来る新しい溶解システムを開発し、アルミダイカスト産業において自社導入を可能とするシステムの実現を目指す。この溶解システムは切粉の付着油水分を蒸発・除去する予熱工程と、予熱した切粉を溶湯中に挿入し拡散して溶解する溶解工程から構成されている。予熱工程では、加熱拡散搬送を行うスクリューフィーダ内の酸素濃度を管理することで安全性を高め、発生した排気ガス(ヒューム)を完全燃焼させることでクリーンな排気を実現する。溶解工程では、溶湯中にセラミックス回転円筒体を設置することで、切粉の酸化被膜を破り、溶解を促進する。また、両工程における熱源として電気ヒータを用いることで、温度制御の自動化を容易にするとともに、燃焼ガスとしてLPGを使用する場合に比べて大幅なCO2削減を目指す。
本技術によりアルミダイカスト産業におけるコスト削減ニーズに応えるとともに、安全性に優れ地球環境にも優しい溶解システムの実現が期待できる。
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