地球温暖化の抑制と持続可能な社会を実現するために重要な森林資源の維持管理において、国は林業・木材産業の担い手となる若者の確保・育成に向けて、3K職場からの脱却とその安全対策が必須となっている。近年、林業作業においてチェーンソー防護ズボンは法律上着用しなければならない必要な装備となっているが、従来製品では通気性が悪く、厚く重いため動きにくいという課題がある。特に夏場の高温多湿の気候では、厚く重い防護ズボンの着用は熱中症などのリスクもあり、快適で機能的な安全性の高い製品の開発が求められている。
本申請は2022年9月にJIS T8125-1「チェーンソーでの切断抵抗性試験に用いる試験装置」およびJIS T8125-2「脚部防護服」が改正され評価基準が厳しくなったことで、その新基準に適合する新たな防護素材~防護服の開発と社内検証可能な試験装置を開発するものである。
防護材料に関しては、現在、特許を保有している織組織に加え、新しい素材の最良な組み合わせと配置、新しい織組織と編み組織の組合せを開発する。具体的には安全性と通気性を確保するために隙間のある経糸に対し緯糸を挿入し織ることにより、それぞれを抜けやすいように細い編み糸で留める構造を特徴とする防護材料を開発する。また最新の規格に合った試験装置は世の中に存在しないため、開発加速および開発コスト削減を目的に、現在保有している試験装置を参考に設計を変更し、改正された規格基準を満たす新たな試験装置を設計・製作する。
現在、林業・木材産業は、他の日本の産業と同様に労働力不足の問題が顕在化しており、従業員の定着のため適切な労働環境の整備や、女性参画を促進する上でも、成長産業化に向けた技術革新が求められている。本開発は、林業における作業員の労働安全衛生の向上と、事業主のリスクアセスメントにおける作業環境と労働災害の防止による社会貢献にも繋がる。
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