マイクロ秒精度で時刻を合わせるネットワークプロトコルにPTP(Precision Time Protocol)がある。従来のPTPは、ネットワーク遅延を制御したクローズドなネットワーク内でしか動作しないという課題があった。公共インターネットでもPTPを用いてマイクロ秒精度の時刻を同期できると、導入コストが劇的に下がり応用分野が広がると期待されている。
本技術開発(RPTP(Resilient PTP))ではPTPの時刻元(Grandmaster, GM)から公共インターネット経由で配信された時刻を受信するスレーブ装置を開発する。この装置は内部に二つのタイマーを持つ。一つはPTPで時刻を同期するタイマー、もう一つは時刻を同期せずPTPの同期メッセージ交換専用のタイマーである。同期メッセージ専用のタイマーはGMとスレーブとの間のネットワーク遅延により線形的に時刻がずれていく。遅延の予測値と実測値をADAM(Asymptote Delay Analysis Method)と呼ぶ独自のアルゴリズムで処理することで、時間の経過に伴い予測値直線が理想値直線に接近し、結果として時刻同期の精度が向上する(図1)。
本技術開発の応用分野の一つは放送局でのアプリケーションである(図2)。本社側から発信された時刻情報を、公共インターネットを通じて送信所に配信し、本社と複数の送信所間での時刻を同期できる。これにより、従来よりも大幅にコストを削減でき、放送設備のクラウド化等に貢献できる。
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