ワクチンを始めとする医薬品や臓器、試薬原料など厳密な温度管理が必要な物品の輸送需要は年々増加している。これら温度管理が必要な物品輸送において、輸送品質を担保するために、温度変化、湿度変化、受けた衝撃などの情報を記録するロガーが用いられてきた。しかし、記録するだけのロガーでは、輸送品質の悪化に対し速やかに対応することが出来ない。そのため、通信および演算機能を備えた“輸送品質可視化ツール”の開発が求められてきた。
本技術開発の装置では、複数の温度センサーを用いることにより、保冷ボックス内の温度分布を測定し、すべての領域で温度が規定範囲内に収まっていることを監視することができる。さらに演算および通信機能を備えており、温度が規定範囲外に逸脱する可能性がある場合、その時間を予測し通知する機能を備えている。これらの機能により、輸送環境を維持するための対策を速やかに行うことが可能となる(図1参照)。
保冷ボックス内部のどの位置に医薬品等を配置してもその温度を確実にモニターできることはもとより、温度逸脱予想機能を備えているため、時間に余裕を持って厳格な温度管理要件を遵守する事ができ、輸送物品の品質の低下や廃棄処分のリスクも大幅に軽減できる。今後、医療や科学技術の発展により、温度管理が必要な物品の輸送が増加することが予想される。特に医療に関する物品輸送は、人命に関わる事もあるためより厳密な管理が必要であり、本開発製品のような“輸送品質可視化ツール”の需要は、今後ますます高まると期待される。
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