水力発電は、大規模設備ほどコストを低減できるが適した場所は限定されており、小規模でもコストが見合うことと設置場所の創出が課題である。新たな設置場所として、都市部のビルや工場のHVAC(Heating, Ventilation and Air Conditioning)システムの流量制御バルブの代わりに設置するマイクロ水力発電システム(図1)に着目し、一般的に活用される密閉型水循環システムで使える前例のないシステムを開発する。密閉型水循環システムでは、AHU(Air Handling Unit)の数に比例して分岐が増え、複数流路の圧力バランスを均等化し、流量を制御するために流量制御バルブが用いられる。この流量制御バルブで消失しているエネルギーを回収する。
落差に相当する流量制御バルブの圧力損失は大きくないため、低出力でも高効率・低コストが必須である。採用するフランシス水車(図2)は、水が流入するケーシング、流量を均等にするステーベン、ランナ(羽根車)入口の流れの向きを調整するガイドベーン、水のエネルギーを回転動力に変換するランナ、水を排出する吸出管とからなる。可動部がありコストアップとなるガイドベーンを無くした上で、低出力用途(2kW)に絞ってランナの羽の出口部分の角度、再循環防止ケーシング、水が進むにつれ一定割合で減少するステーベン間隔など最適設計を行い、すでに最大発電効率80%以上を実現している。本技術開発では、モジュラーデザイン、3Dプリンタを活用して低コスト化し、投資回収期間10年以下を目指す。
工場と建物セクターのHVACシステムの消費エネルギーは、全セクターエネルギー消費の17.8%も占めており、世界的にHVAC効率化の取り組みが開始された。その一部を回収することは価値がある。国内でもZEB(Net Zero Energy Building)に向けた取り組みが進み、太陽光発電に加えて本マイクロ水力発電も創エネで貢献できる。
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