末期腎不全患者の内、10万人いる64歳以下の労働年齢において5万人が就労できていない理由は、クリニック等で週3回、4時間/回の透析を受け、時間的にも身体的にも負担が大きいからである。一方、在宅での透析は、水を大量に使用し、治療装置やRO水製造装置も大型で、操作やメンテナンスも難しいものになっているため、導入および利用が難しい。
本申請では、最小限の給排水により配管を不要とし、透析中のイオン濃度などをモニタリングし、透析速度を調整しながら体への負担を低減することを可能とする在宅透析装置を提案する。従来、精製した水道水を用いて透析液を調合するが、本技術では、透析液を循環、再利用する。また、血液中と透析液中のカリウム(K)イオン濃度差が大きいと、不整脈等のリスクが高まるため、透析液成分をモニタリングし、Kイオン濃度が低すぎる場合、K吸着除去フィルタをバイパスすることで、Kイオン除去を選択的に実施し、透析前後の液中成分を比較して透析速度を制御し、体に負担をかけない安全な透析を実現する。モニタリングデータは遠隔で病院施設と共有し、異常などに対応できる機能を有する。本技術では、透析後の血中Kイオンが透析前の濃度より常に少し低い程度で吸着を実行する基本機能を獲得している。また、イオン濃度は電極法で測定するが、装置内部に校正液を保持し、電極劣化を防ぎ正確な計測を可能としている。
競合技術として、海外の在宅血液透析機器がいくつかあるが、血液抗凝固剤の処方や透析液の制御機能に問題を有しており、国内への導入が断念された事例がある。
本申請技術は、在宅で、安全に頻度高く透析を行うことで、患者とその家族により高いQOL(生活の質)を提供するものであり、その社会貢献価値は高いと考える。
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