近年、優れた薬効と高額な薬価でタンパク質を主成分とする注射剤が注目されているが、この様な注射剤では主成分含量が微量であることが多く、注射針内外面へのわずかな量の吸着も薬効に影響を与える事がわかってきており、その抑制が求められている。
タンパク質吸着を抑制する優れたコーティング剤として、血管内皮細胞の表面構造を模倣したMPCポリマーが広く知られているが、強固で良質なコーティング膜形成に必要となる前処理(プラズマ処理等)が注射針の内外面には難しく、注射針へのMPCポリマー適用の技術的な課題となっていた。本開発ではナノバブル化オゾン水を用いて注射針内外面に均一な前処理を行い、MPCポリマーを強固にコーティング可能とし、従来実現が難しかったタンパク質吸着を抑制可能な注射針を実現する。
本技術開発によりタンパク質吸着を抑制する注射針が実用化されれば、患者に対して処方される注射剤の主成分を損なうことなく適切に投与することが可能となる。また近年は画期的な効果を示すタンパク質製剤が多数上市されてきており医薬品分野の中でも高い成長が見込まれているが、高額な薬価から医療費の増大が懸念されている。高価なタンパク質製剤を吸着等で無駄に損失しない注射針が提供されることで、医療費抑制の効果も期待される。
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