グラフェンは炭素原子が蜂の巣状に配列して2次元に広がったユニークな構造を持つ物質であり、様々な優れた特性を示すことから、その応用展開を目指して活発な研究開発が進められている。ただこれまで上市されているグラフェンは高品質なものは高価で、安価なものは質に劣るという問題点があり、安価で高品質なサンプルの量産が強く待ち望まれている。
本技術はグラファイトにリチウムをインターカレートした後、超高圧ホモジナイザで高圧噴射することにより剥離してグラフェンを合成し、これを有機溶媒(N-メチル-2-ピペリドン(NMP)等)中に分散させた溶液(図1)を製造するものである。他の方法で製造された類似サンプルと比べて欠陥が少なく優れた物性値を示すことに加えて、大幅なコストダウンが可能となる。本開発では量産スケールの150L容量の溶解槽、合成槽を設計、製作し(図2)、1バッチ約5kgのグラフェンを72時間で製造するプロセスを確立することを目指す。合成には活性な試薬であるリチウム金属、低沸点溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)を大量に使用するために、自動運転、防爆対策仕様の合成装置とする。
本製造プロセスが確立されれば、優れた電気伝導性、熱伝導性、機械的特性を示すグラフェンの有機溶媒分散液を量産レベルで安価に提供することが可能となり、幅広い用途の開拓につながると期待される。特にリチウム電池電極用の導電助剤、プリンティッドエレクトロニクス向け導電性インクなどへの応用展開が有望視される。
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