悪性腫瘍は、われわれが直面している深刻な病気の一つである。その治療過程で、再発の防止や転移を早期に知り、治療することはとても重要な課題である。本研究開発では、侵襲性がつよい生検に代わる低侵襲な検査方法を提供することを目的としている。
転移の過程で、悪性腫瘍から発生する細胞の一部が、血液に流れ出る。その量は、初期の段階では、60憶細胞のなかから数個の細胞を見つけ出すレベルといわれている。本研究開発では、マイクロ流路内にマイクロピラーを敷き詰め、血液を流し込むことにより、がん化した細胞のサイズがわずかに大きいことを利用して流路中のピラーに細胞をトラップする仕組みを作る。さらに、得られた細胞の性質を明確にするために、流路には抗体等の試薬を混合して供給し、蛍光計測により、その性質を分析する手法を組み込み、最終的には、1細胞レベルで分取することが可能なシステムを提供するものである。
本提案システムの実現により、これまでになく低侵襲かつ精度の高い、がんの転移早期発見のための検査装置を提供するものであり、国民の大切な生命を守るために重要な医療技術を提供することができる。さらに、細胞分取によって得られた細胞を利用したがんの性質にあわせた化学療法の方針の決定や創薬の開発にも大きな貢献をするものである。
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