老眼になると、見る物体の遠近に応じて眼鏡の掛け外し/掛け替えや、遠近両用眼鏡でも視界の歪み/狭さに耐えるといった不便を強いられる。度数可変の眼鏡も販売されているが、レンズ口径や調整度数幅でユーザーの満足には至っていない。
本開発では、一般の眼鏡レンズ並みの35×50mmのサイズ、既に近視で眼鏡を使用しているユーザーにも-5〜+5度の可変幅で対応できる薄型のフレネル型液晶レンズを試作する。フレネルレンズは、鋸刃状の断面を持つ薄型レンズで、透明樹脂製のしおり型ルーペなどに用いられている。独自開発の液晶レンズ(図1)は、液晶表示パネルと同様に2枚のガラス等基板に層厚15〜30μm程度の液晶材料を封入し、独自の薄膜構造と透明櫛型電極をフレネル型に展開したもので、光の波面を電気的に制御することで焦点距離、つまり度数を変化できる(図2)。加えて、眼球運動を抽出する独自開発の組込ハードウエア、及び「クリアに見えている」を判定するデータ解析アルゴリズムを開発し、オートフォーカスに必要な要素技術の確立を目指す。FPGA回路をフレキシブル基板に実装し、眼鏡のツルに収納する設計により、日常使用できるオートフォーカスグラスの実現に向けたプロトタイプを製作する。
本技術は眼の老化で就労や文化的活動を諦めている人達のQOL、QOWを高め、社会貢献の選択肢や活動の場を拡げる。またAR/VRグラスや、他スマートグラスにも搭載可能である。ヘルスケア・医療用途では、国内300万人以上の生活改善に資すると期待される。
|