POCT(迅速検体検査) 機器は、大病院にある大型免疫検査機器と同等の高感度性能を「小型」「安価」「迅速」に発揮するものであり、疾病の早期発見・早期治療が可能となることから、地域の診療所を中心とする中小医療機関や在宅・訪問医療への展開が期待される。
POCT機器としてはインフルエンザや新型コロナの抗原検査で知られる免疫クロマト法が普及している。これは抗体を標識する金ナノ粒子の赤色を用いる検査法であるが、定性的であり、感度が低いという課題があった。本技術では、ここに電気化学的な酸化還元反応を組み合わせた点に発明者の独創性がある。すなわち、抗体に標識した金粒子を電気化学的に酸化して生じるテトラクロリド金(III)酸イオンを、逆に還元する際に流れる電流値から疾病マーカー定量を行うという原理である。高感度での精密定量が可能であり、新規性・進歩性が高い。装置も簡便で、低価格かつ軽量・小型化が容易である。本技術開発では、複数疾病マーカーの多項目同時診断を目指すものである。
多項目免疫センサはより高度な医療を可能とし、たとえば心筋梗塞・心不全・肺血栓塞栓症の鑑別診断が効率化されると期待される。POCT診断技術はCovid19禍でも経験したように、社会的有用性が高い。医療のみならずヘルスケア市場においてもポテンシャルがある。
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